【2025年最新】介護事業所の倒産・休廃業データまとめ|現場経験者が読み解く
介護事業所の倒産が止まらない――2年連続で過去最多を更新
介護事業者の倒産が、深刻な状況を迎えています。
東京商工リサーチの調査によると、2024年の「老人福祉・介護事業」の倒産は172件で過去最多を記録。さらに2025年は176件と、2年連続で最多を更新しました。
倒産だけではありません。自主的に事業をたたむ「休廃業・解散」も2025年には653件に達し、こちらも4年連続で過去最多です。倒産と休廃業を合わせると、2025年だけで829件もの介護事業者が市場から退出した計算になります。
17年間現場にいた筆者として、この数字は衝撃的です。私が訪問看護ステーションの管理者をしていた頃にも、近隣の訪問介護事業所が突然閉鎖され、利用者さんの受け入れ先探しに奔走した経験があります。数字の裏には、サービスを受けられなくなる高齢者の方々がいることを忘れてはいけません。
この記事では、帝国データバンクと東京商工リサーチの公的データをもとに、介護事業所の倒産・休廃業の最新動向を解説します。
介護事業者の倒産件数推移(2019〜2025年)
まず、東京商工リサーチが公表している「老人福祉・介護事業」の倒産件数の推移を見てみましょう。
| 年 | 倒産件数 | 前年比 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2019年 | 111件 | — | 高水準が続く |
| 2020年 | 118件 | +6.3% | コロナ禍で過去最多を更新 |
| 2021年 | 81件 | ▲31.4% | コロナ支援策・報酬プラス改定で減少 |
| 2022年 | 143件 | +76.5% | 支援策の効果薄れ、過去最多を大幅更新 |
| 2023年 | 122件 | ▲14.7% | 過去2番目の高水準 |
| 2024年 | 172件 | +41.0% | 過去最多を更新 |
| 2025年 | 176件 | +2.3% | 2年連続で過去最多を更新 |
出典:東京商工リサーチ「老人福祉・介護事業」倒産状況調査(各年)
ポイント:2021年の減少は「一時的な延命」だった
2021年にいったん81件まで減少したのは、コロナ関連の資金繰り支援策(実質無利子・無担保融資、持続化給付金など)と、**2021年度の介護報酬プラス改定(+0.70%)**が下支えしたためです。
しかし2022年以降、支援策の返済が始まり、物価高騰が追い打ちをかけたことで、倒産件数は急激にリバウンド。2022年の143件は、それまでの最多だった2020年の118件を大きく上回りました。
帝国データバンクの調査でも同様の傾向が確認されており、2024年の「老人福祉事業者」の倒産は140件で過去最多、2025年も139件と高止まりしています。
出典:帝国データバンク「老人福祉事業者の倒産動向調査」(2025年)
休廃業・解散の動向――倒産の3倍以上が「静かに消えている」
倒産(法的整理)だけでは、介護事業者の退出の実態は見えてきません。実は、倒産よりもはるかに多くの事業者が「休廃業・解散」という形で市場から退出しています。
| 年 | 倒産件数 | 休廃業・解散件数 | 合計(市場退出数) |
|---|---|---|---|
| 2020年 | 118件 | 455件 | 573件 |
| 2021年 | 81件 | 428件 | 509件 |
| 2022年 | 143件 | 495件 | 638件 |
| 2023年 | 122件 | 510件 | 632件 |
| 2024年 | 172件 | 612件 | 784件 |
| 2025年 | 176件 | 653件 | 829件 |
出典:東京商工リサーチ「老人福祉・介護事業」倒産、休廃業・解散調査(各年)
2025年の休廃業・解散653件は、倒産176件の約3.7倍です。債務超過に陥る前に、経営者が自主的に事業を閉じる「あきらめ廃業」が増えていることを意味しています。
背景には、代表者の高齢化と後継者不在の問題もあります。介護事業の経営者が70代・80代になり、体力的にも経営的にも限界を感じて廃業を選ぶケースが少なくありません。
業態別の倒産データ――訪問介護が突出
訪問介護:3年連続で過去最多を更新
2025年の業態別倒産件数で最も多いのは訪問介護の91件です。全体の約52%を占め、3年連続で過去最多を更新しています。
| 年 | 訪問介護 | 通所・短期入所 | 有料老人ホーム |
|---|---|---|---|
| 2023年 | 67件 | — | — |
| 2024年 | 81件 | 56件 | 18件 |
| 2025年 | 91件 | 45件 | 16件 |
出典:東京商工リサーチ「介護事業者」倒産調査(各年)
訪問介護の倒産が突出している理由は、主に以下の3つです。
1. 2024年度介護報酬改定での基本報酬引き下げ
2024年度の介護報酬改定では、介護報酬全体は+1.59%のプラス改定でしたが、訪問介護の基本報酬は約2%のマイナス改定となりました。身体介護(20分未満)は167単位から163単位に、生活援助(20分以上45分未満)は183単位から179単位に引き下げられています。
出典:厚生労働省 令和6年度介護報酬改定
厚生労働省の説明では、訪問介護の収支差率が+7.8%と全サービス平均の+2.4%を大きく上回っていたことが引き下げの根拠とされました。しかし、これは大手事業者が平均を押し上げたもので、小規模事業者の実態とはかけ離れています。
2. 深刻なヘルパー不足
訪問介護員(ホームヘルパー)の有効求人倍率は常に高水準で推移しており、人材確保が極めて困難な状況です。ヘルパーが確保できなければ、利用者からの依頼を断らざるを得ず、売上の減少に直結します。
3. 小規模事業者が多い構造
訪問介護は比較的小資本で開業できるため、従業員5人未満の小規模事業者が大半を占めています。経営体力が弱く、報酬改定や人件費上昇のショックを吸収できません。
デイサービス(通所介護)の状況
デイサービスの倒産も高水準が続いています。2024年は56件(過去2番目)、2025年は45件でした。利用者の確保競争が激化しており、特色のないデイサービスは淘汰される傾向にあります。
訪問看護の状況
訪問看護ステーションの新規開設は増加傾向にある一方で、競争激化により小規模事業所の廃業も増えています。2024年6月から8月のわずか3か月間で、訪問介護事業所563件が休止・廃止となった一方、再開・新規開設も583件あり、事業所の入れ替わりが激しい状態です。
出典:厚生労働省 令和6年介護サービス施設・事業所調査
倒産の主な原因分析
原因1:深刻な人手不足
介護業界の人手不足は、他産業と比較しても際立っています。
- 介護サービス職の有効求人倍率:約3.4〜4.0倍(2024〜2025年)
- 全職種平均の有効求人倍率:約1.2〜1.3倍(同時期)
出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」
介護職の有効求人倍率は全職種平均の約3倍です。つまり、1人の求職者に対して3〜4件の求人がある「超売り手市場」であり、小規模事業者は大手に人材を奪われやすい構造になっています。
帝国データバンクの調査でも、2025年は人手不足を原因とする倒産が急増していることが報告されています。
出典:帝国データバンク「老人福祉事業者の倒産動向調査」(2025年)
17年間の現場経験で最も痛感したのが人材確保の難しさです。特に訪問介護のヘルパーは、移動時間が労働時間に含まれない問題や、1件あたりの訪問時間が短いため安定した収入を得にくいという構造的な課題があります。優秀なヘルパーほど、条件のよい施設系サービスに流れてしまうのが現実です。
原因2:介護報酬改定の影響
介護報酬は3年に1度改定されますが、改定のたびに事業者の経営を大きく左右します。
2024年度の改定では、全体として+1.59%のプラス改定だったものの、訪問介護・訪問入浴介護・通所リハビリテーション・居宅療養管理指導の4サービスで基本報酬がマイナス改定となりました。
特に訪問介護への影響は大きく、2024年度(2024年4月〜2025年3月)の介護事業者の倒産179件のうち、訪問介護が約半数の86件を占めています。
出典:東京商工リサーチ「2024年度 介護事業者倒産調査」
原因3:入金サイクル(約2ヶ月)による資金繰りの悪化
介護報酬は、サービス提供月の翌月10日までにレセプトを国保連に提出し、翌々月の下旬に入金されます。つまり、サービスを提供してから入金まで約2ヶ月のタイムラグがあります。
この間も人件費・家賃・光熱費などの支出は毎月発生するため、手元資金に余裕がない小規模事業者にとっては、資金ショートのリスクが常につきまといます。
原因4:物価高・人件費高騰
2022年以降の物価高騰は、介護事業者の経営を直撃しています。
- 食材費・光熱費・ガソリン代の上昇
- 最低賃金の引き上げによる人件費の増加
- 介護用品・衛生用品の価格上昇
介護報酬は公定価格であり、物価が上がっても事業者が自由に価格を引き上げることはできません。コストが増えても収入は据え置き――この構造が、介護事業者の経営を圧迫し続けています。
2025年の倒産原因を見ると、販売不振(売上不振)が全体の約8割を占めており、人手不足による利用者数の減少と、コスト増による収益悪化が同時に進行している実態がうかがえます。
出典:東京商工リサーチ「2025年 介護事業者倒産調査」
資金繰り対策――「手遅れ」になる前にできること
倒産・廃業の多くは、資金ショートがきっかけです。逆に言えば、資金繰りを安定させることができれば、経営を立て直すチャンスは十分にあります。
対策1:介護報酬ファクタリングで入金サイクルを短縮
介護報酬ファクタリングは、国保連への介護報酬債権を早期に資金化するサービスです。通常2ヶ月かかる入金を、最短数日〜2週間程度に短縮できます。
手数料の相場は0.25%〜3%程度と、一般的なファクタリングと比較して非常に低い水準です。これは売掛先が国保連(国の機関)であり、貸し倒れリスクがほぼゼロであるためです。
詳しくは以下の記事で比較しています。
関連記事:介護報酬ファクタリング比較
対策2:公的融資の活用
福祉医療機構(WAM)や日本政策金融公庫は、介護事業者向けの低利融資を提供しています。民間の金融機関よりも金利が低く、返済期間も長いため、資金繰りの安定化に有効です。
対策3:補助金・助成金の活用
ICT導入補助金やキャリアアップ助成金など、介護事業者が活用できる制度は複数あります。返済不要の資金を活用することで、経営の安定化と業務効率化を同時に実現できます。
管理者としてPL管理を担当していた経験から言えるのは、「資金繰りに困ってから動くのでは遅い」ということです。倒産した事業所の多くは、問題に気づいてから対策を講じるまでに時間がかかりすぎています。月次の資金繰り表を作成し、3ヶ月先の資金を常に把握しておくことが、最も重要な経営管理です。
まとめ
介護事業者を取り巻く経営環境は、かつてないほど厳しい状況にあります。
- 倒産件数は2024年172件、2025年176件と2年連続で過去最多を更新
- 休廃業・解散は2025年に653件で4年連続過去最多
- 訪問介護の倒産が全体の半数以上を占め、突出して多い
- 人手不足、介護報酬のマイナス改定、物価高が三重苦として事業者を圧迫
- 2ヶ月の入金タイムラグが資金繰りを一層厳しくしている
しかし、適切な資金調達手段を知り、早めに行動することで、経営を安定させることは可能です。ファクタリング、公的融資、助成金を組み合わせた資金繰り対策については、以下の記事も参考にしてください。
出典一覧
- 東京商工リサーチ「老人福祉・介護事業」倒産状況調査(2019〜2025年各年)
- 東京商工リサーチ「老人福祉・介護事業」休廃業・解散調査(2020〜2025年各年)
- 帝国データバンク「老人福祉事業者の倒産動向調査」(2024年・2025年)
- 厚生労働省 令和6年度介護報酬改定
- 厚生労働省「一般職業紹介状況」
- 厚生労働省 令和6年介護サービス施設・事業所調査