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介護事業所の資金調達方法6選|開業時から経営安定期まで完全ガイド

介護事業所の資金調達――選択肢を知っているかどうかが経営を左右する

介護事業の経営において、資金調達は避けて通れない課題です。

開業時には設備投資や運転資金が必要になり、開業後も介護報酬の入金まで約2ヶ月のタイムラグがあるため、常に手元資金の確保が求められます。さらに、2024年・2025年と介護事業者の倒産が2年連続で過去最多を更新するなか、資金繰りの安定はこれまで以上に重要性を増しています。

筆者は理学療法士として17年間、医療・介護の現場で働いてきました。訪問看護ステーションの管理者として損益管理も担当していた経験から断言できるのは、「資金調達の選択肢を知っているかどうか」が事業の存続を大きく左右するということです。知らないまま資金ショートに追い込まれた事業所を、私は何度も目にしてきました。

この記事では、介護事業所が使える6つの資金調達方法を、開業時から経営安定期までステージ別に整理して解説します。

介護事業所が使える資金調達方法の全体像

介護事業所が活用できる主な資金調達方法は、以下の6つです。

No.資金調達方法主な用途調達スピード金利・手数料の目安
1福祉医療機構(WAM)設備投資・運転資金1〜3ヶ月年1.0〜1.6%程度
2日本政策金融公庫開業資金・設備投資1〜2ヶ月年1.0〜3.0%程度
3銀行融資(地銀・信金)設備投資・運転資金2週間〜2ヶ月年1.5〜4.0%程度
4介護報酬ファクタリング運転資金(資金繰り改善)最短数日0.25〜3.0%程度
5補助金・助成金設備投資・人材育成2〜6ヶ月返済不要
6ノンバンク・ビジネスローン緊急の運転資金最短即日年5.0〜18.0%

それぞれの特徴、メリット・デメリット、活用のポイントを詳しく見ていきましょう。

①福祉医療機構(WAM)の融資

概要

**独立行政法人 福祉医療機構(WAM)**は、社会福祉施設や医療施設に対して長期・固定・低利の融資を行う公的機関です。介護事業所にとって最も有利な条件で借りられる融資先の一つです。

融資条件・金利

  • 金利:年1.0〜1.6%程度(固定金利、借入期間・時期により変動)
  • 保証人不要制度あり(金利+0.05%上乗せ)
  • 融資限度額:施設の種類・規模により異なる
  • 返済期間:最長30年(据置期間あり)
  • 対象施設:特別養護老人ホーム、ケアハウス、デイサービスセンター、障害福祉サービス事業所 など

出典:独立行政法人福祉医療機構「福祉貸付事業」

物価高騰対応優遇融資

2024年〜2025年にかけて、物価高騰の影響で収益が悪化した社会福祉施設・医療施設に対して、2〜5年間無利子の融資制度が設けられています。該当する事業者は積極的に活用すべきです。

出典:福祉医療機構「物価高騰対応優遇融資制度」

メリット

  • 民間金融機関と比較して金利が非常に低い
  • 固定金利のため返済計画が立てやすい
  • 最長30年の長期返済が可能
  • 保証人不要制度がある

デメリット

  • 審査に時間がかかる(1〜3ヶ月程度)
  • 対象施設が限定されている(訪問介護単独では利用しにくい場合あり)
  • 設備資金が中心で、純粋な運転資金の借入は制約がある
  • 必要書類が多い

活用のポイント

WAM融資は、施設系サービスの開設・増築に最も適しています。金利の低さと返済期間の長さは他の融資に比べて圧倒的に有利なため、対象施設に該当する場合はまずWAMへの相談を検討しましょう。

②日本政策金融公庫の融資

概要

日本政策金融公庫は、政府系金融機関として中小企業や個人事業主の資金調達を支援しています。特に開業時に使いやすいのが大きな特徴で、介護事業での創業融資の実績も豊富です。

融資条件・金利

  • 金利:年1.0〜3.0%程度(制度・条件により異なる)
  • 融資限度額:新規開業・スタートアップ支援資金は最大7,200万円(うち運転資金4,800万円)
  • 返済期間:設備資金20年以内、運転資金10年以内(据置期間あり)
  • 担保・保証人:原則不要(2024年3月の制度改正で柔軟化)
  • 自己資金要件:2024年の制度改正で自己資金10%要件が撤廃

出典:日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」

金利優遇制度

以下の条件に該当する場合、特別金利が適用されます。

  • **女性、若者(35歳未満)、シニア(55歳以上)**の創業者
  • 創業後の雇用創出計画がある事業者
  • 地域経済の活性化に寄与する事業者

メリット

  • 開業前でも申請できる(創業計画書ベースで審査)
  • 民間金融機関より金利が低い
  • 無担保・無保証人で借りられる制度がある
  • 介護事業の創業融資に対する理解がある

デメリット

  • 審査期間が1〜2ヶ月かかる
  • 創業計画書の精度が求められる
  • 融資実行後の報告義務がある

活用のポイント

開業を検討している段階で、早めに最寄りの支店に相談することをおすすめします。創業計画書の書き方のアドバイスももらえます。また、認定支援機関(税理士・中小企業診断士等)を経由すると、審査がスムーズになる場合があります。

③銀行融資(地銀・信金)

概要

地方銀行や信用金庫からの融資は、介護事業者にとって最もスタンダードな資金調達手段です。ただし、一定の事業実績がないと審査が通りにくいのが現実です。

融資条件・金利

  • 金利:年1.5〜4.0%程度(事業実績・担保の有無により変動)
  • 融資限度額:事業規模・実績に応じて個別審査
  • 返済期間:設備資金10〜15年、運転資金5〜7年程度
  • 担保・保証人:必要な場合が多い(信用保証協会の保証付き融資も可能)

メリット

  • 審査スピードが比較的早い(2週間〜2ヶ月)
  • 取引実績を積むことで条件が改善される
  • 追加融資やリファイナンスの相談がしやすい
  • 経営全般のアドバイスをもらえる場合がある

デメリット

  • 開業直後は審査が通りにくい(最低2〜3期の決算実績が望ましい)
  • 金利がWAMや公庫と比べて高い
  • 担保や保証人を求められることが多い
  • 介護事業への理解度は担当者次第

活用のポイント

開業後早い段階からメインバンクとの関係構築を始めましょう。日常の入出金をメインバンクに集中させ、定期的に経営状況を報告することで、いざという時の融資審査がスムーズになります。

17年間の現場経験のなかで、資金調達に成功している事業所に共通していたのは「銀行との関係づくりが上手い」ことでした。年に一度は決算書を持って銀行を訪問し、事業計画を説明している経営者は、急な資金需要にも迅速に対応してもらえていました。逆に、困った時だけ銀行に駆け込む事業者は、融資を断られるケースが目立ちました。

④介護報酬ファクタリング

概要

介護報酬ファクタリングは、国保連への介護報酬債権(売掛金)をファクタリング会社に譲渡し、入金を早期に受け取るサービスです。融資とは異なり、借入ではない資金調達方法です。

条件・手数料

  • 手数料:0.25〜3.0%程度(債権額に対して)
  • 資金化までの期間:最短数日〜2週間程度
  • 利用条件:介護報酬の請求実績があること
  • 審査対象:事業者の信用力よりも、**債権(国保連への請求額)**が重視される

手数料が低い理由は、売掛先が**国保連(国の機関)**であり、貸し倒れリスクがほぼゼロであるためです。一般的な売掛金ファクタリング(手数料5〜20%)と比較すると、非常に有利な条件です。

メリット

  • 審査が早い(最短数日で資金化)
  • 借入ではないため負債にならない
  • 事業者の信用力が低くても利用できる
  • 国保連が売掛先のため手数料が低い
  • 開業1年目から利用可能

デメリット

  • 毎月利用すると手数料がコストとして積み重なる
  • 介護報酬の請求実績がない開業直後は利用できない
  • ファクタリング会社によって手数料・サービス内容に差がある

活用のポイント

ファクタリングは「常用する資金調達」ではなく、一時的な資金繰りの改善策として活用するのが理想です。開業初期の売上が安定しない時期や、突発的な支出が発生した時に特に有効です。

各社の手数料・条件の比較は以下の記事で詳しく解説しています。

関連記事:介護報酬ファクタリング比較

⑤補助金・助成金

概要

国や自治体が実施する補助金・助成金は、返済不要の資金調達手段です。介護事業者が活用できる制度は複数ありますが、申請手続きが複雑で、採択までに時間がかかる点に注意が必要です。

主な制度

ICT導入補助金(介護テクノロジー導入支援事業)

  • 対象:介護ソフト、タブレット端末、見守りセンサーなどのICT機器導入
  • 補助率:導入費用の1/2〜3/4程度(都道府県により異なる)
  • 補助上限額:事業所の職員数に応じて設定
  • 申請先:各都道府県

2025年度(令和7年度)は「介護テクノロジー導入支援事業」として見直しが行われ、補助金額は拡充されていますが、補助要件は一部追加されています。

出典:厚生労働省「介護テクノロジー導入支援事業」

キャリアアップ助成金

  • 対象:非正規雇用の介護職員を正社員化した場合 など
  • 支給額:1人あたり最大80万円(正社員化コースの場合)
  • 申請先:管轄の労働局・ハローワーク

非正規のヘルパーやパート職員を正社員に登用する際に活用できます。人材確保と助成金活用の両方を実現できる制度です。

IT導入補助金

  • 対象:業務効率化のためのITツール導入(介護記録ソフト、勤怠管理など)
  • 補助率:1/2〜3/4
  • 補助上限額:最大450万円(枠により異なる)
  • 申請先:IT導入補助金事務局

メリット

  • 返済不要
  • 設備投資・人材育成の費用負担を軽減できる
  • ICT化や業務効率化のきっかけになる

デメリット

  • 申請から採択まで時間がかかる(2〜6ヶ月)
  • 申請書類の作成に手間がかかる
  • 後払いのため、いったん自己資金で立て替えが必要な場合がある
  • 不採択になる可能性がある

活用のポイント

補助金・助成金は「もらえたらラッキー」ではなく、計画的に活用することが重要です。年度初めに公募情報をチェックし、申請スケジュールを把握しておきましょう。社会保険労務士や行政書士に申請支援を依頼するのも有効です。

⑥ノンバンク・ビジネスローン

概要

ノンバンク(消費者金融系・信販系)のビジネスローンは、銀行融資が受けられない場合の最終手段として位置づけられます。審査スピードは最も早いですが、金利も最も高い調達方法です。

融資条件・金利

  • 金利:年5.0〜18.0%(事業者の信用力により大幅に変動)
  • 融資限度額:数十万〜1,000万円程度
  • 返済期間:1〜5年程度
  • 審査スピード:最短即日〜数日
  • 担保・保証人:不要の場合が多い

メリット

  • 審査が非常に早い(最短即日)
  • 他の融資を断られた事業者でも利用できる場合がある
  • 担保・保証人不要のケースが多い

デメリット

  • 金利が非常に高い(年5〜18%)
  • 長期的な利用は経営を圧迫する
  • 返済負担が大きい
  • ノンバンクからの借入は、銀行融資の審査でマイナス評価になる可能性がある

活用のポイント

ビジネスローンは、あくまで**「つなぎ資金」「緊急時の一時的な資金」**として利用すべきです。恒常的に利用する状況になっている場合は、経営そのものを根本的に見直す必要があります。

現場で見てきた経験から率直に言えば、ノンバンクに頼らざるを得ない状況は、すでに経営が危険水域に入っているサインです。その前段階で、ファクタリングや公的融資で手を打っておくことが何より重要です。

ステージ別おすすめ資金調達方法

介護事業のステージによって、適切な資金調達方法は異なります。以下のテーブルを参考にしてください。

ステージおすすめの方法理由
開業前日本政策金融公庫、WAM開業前から申請可能。低金利で初期投資を賄える
開業1〜3年目ファクタリング、助成金請求実績ができればすぐ利用可能。銀行融資は実績不足で難しい時期
安定期(4年目〜)銀行融資、助成金決算実績をもとに好条件の融資交渉が可能になる
緊急時ファクタリング最短数日で資金化。審査が早く、負債にならない
設備投資時WAM、公庫、補助金大型の設備投資は低金利の長期融資か補助金を活用
事業拡大時銀行融資、公庫事業計画をベースに必要資金を調達

組み合わせ戦略――複数の調達手段を「使い分ける」

資金調達は、1つの方法に頼るのではなく、複数の手段を組み合わせることが鉄則です。ここでは、介護事業所でよくある3つのパターンをご紹介します。

パターン1:開業時の組み合わせ(公庫+ファクタリング)

開業時は日本政策金融公庫の創業融資で初期投資と数ヶ月分の運転資金を確保し、売上が立ち始めたタイミングで介護報酬ファクタリングを併用して資金繰りを安定させる、という組み合わせが最も一般的です。

  • 公庫:設備資金+3〜6ヶ月分の運転資金
  • ファクタリング:介護報酬の入金前倒しで日々の運転資金をカバー

この組み合わせのポイントは、公庫の融資額に「介護報酬が入金されるまでの空白期間(2〜3ヶ月分)」の運転資金を含めておくことです。

パターン2:経営安定化の組み合わせ(銀行融資+助成金)

開業後3〜4年目で経営が安定してきたら、メインバンクからの融資枠を確保しつつ、助成金で設備投資やICT化を進めるのが理想的です。

  • 銀行融資:運転資金の融資枠を確保(コミットメントライン的に)
  • 助成金:ICT導入補助金でタブレット・介護ソフトを導入、キャリアアップ助成金で正社員化を促進

パターン3:事業拡大の組み合わせ(WAM+公庫+ファクタリング)

新しい事業所の開設や施設の増設時は、WAMの長期低利融資を軸に、公庫の融資で不足分を補い、開設後の資金繰りはファクタリングで調整する組み合わせが有効です。

  • WAM:建物・設備の主要な投資資金
  • 公庫:WAMでカバーできない運転資金等
  • ファクタリング:新事業所の介護報酬入金までのつなぎ

まとめ

介護事業所の資金調達方法を6つご紹介しました。改めて整理します。

方法金利・手数料スピード最適なタイミング
WAM融資年1.0〜1.6%遅い施設の新設・増設
日本政策金融公庫年1.0〜3.0%やや遅い開業時・設備投資
銀行融資年1.5〜4.0%普通安定期の運転資金
ファクタリング0.25〜3.0%早い資金繰り改善・緊急時
補助金・助成金返済不要遅い設備投資・人材育成
ビジネスローン年5.0〜18.0%非常に早い最終手段

最も重要なのは、資金繰りに困る前に、複数の選択肢を把握しておくことです。

東京商工リサーチの調査では、2025年の介護事業者の倒産176件のうち、売上不振が約8割を占めています。売上の回復には時間がかかりますが、資金調達の手段を知っていれば、その間の資金ショートを防ぐことができます。

介護報酬ファクタリングの各社比較については、以下の記事で詳しく解説しています。

関連記事:介護報酬ファクタリング比較

介護事業の資金繰りの課題については、こちらの記事も参考にしてください。

関連記事:介護事業の資金繰りが厳しい5つの原因と改善策


出典一覧

  • 独立行政法人福祉医療機構(WAM)「福祉貸付事業」
  • 福祉医療機構「物価高騰対応優遇融資制度」
  • 日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」
  • 厚生労働省「介護テクノロジー導入支援事業」
  • 東京商工リサーチ「2025年 介護事業者倒産調査」
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監修:ファクケア編集部

訪問看護ステーションで17年の臨床・経営経験を。介護・医療現場の資金繰り課題を経験した視点で、ファクタリングサービスを比較・解説します。

  • 臨床経験17年
  • 訪問看護ステーション プレイングマネージャー
  • 3事業所のPL管理・マネジメント経験
  • 採用面接30名以上
プロフィール詳細 →

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