次期介護報酬改定(2027年度)に向けた動きと、今からできる資金繰りの備え
次期介護報酬改定に向けた議論が動き始めた
2026年6月、厚生労働省の社会保障審議会・介護保険部会で、次期制度改正に向けた議論が本格化しています(第135回 介護保険部会 資料)。
介護報酬は3年ごとに改定されます。直近の改定は2024年度で、次回は2027年度が見込まれます。改定の1年以上前から審議会で論点整理が始まるため、いまはまさに「次の改定の方向性が形づくられる時期」にあたります。
改定の内容は、事業所の収入に直接はね返ります。改定の度に資金計画の見直しが必要になるため、議論の段階から動きを追い、早めに備えておくことが経営の安定につながります。
筆者は理学療法士として17年間、医療・介護の現場に携わり、訪問看護ステーションの管理者として損益管理も担当してきました。報酬改定のたびに「単価がどう動くか読めない」不安と向き合ってきた経験から、改定リスクは“起きてから対応する”のでは遅い、と痛感しています。
本記事では、現時点で見えている論点と、改定がどう資金繰りに効くか、そして今から準備できる具体策を整理します。
いま議論されている主な論点
審議会の資料から読み取れる、事業者に関係しうる主な論点は次のとおりです(いずれも議論の段階であり、決定事項ではありません)。
1. 利用者負担のあり方の見直し
介護保険部会では、利用者の預貯金等の資産を把握し、負担に反映する仕組みの検討が進められています(預貯金等の把握 検討の場)。
利用者負担の見直しは、一見すると事業所には無関係に思えます。しかし負担増は**利用控え(サービス利用の手控え)**につながりやすく、稼働率や利用者数に影響しうる点に注意が必要です。
2. 報酬単価・加算の組み替え
報酬改定では、サービス区分ごとに単価が上下し、加算の要件も見直されます。プラス改定でも、自事業所の主力サービスがマイナス配分になることは珍しくありません。処遇改善関連の加算要件が変われば、対応コスト(研修・書類・システム改修)も発生します。
3. 経営の安定化・大規模化の方向性
近年の改定は、小規模事業所の経営難や倒産増加を背景に、経営の効率化・協働化を促す論点が繰り返し取り上げられています。小規模ほど、改定の影響を吸収する体力が問われます。
改定が資金繰りに効く3つの経路
改定は、次の3つの経路で資金繰りに影響します。
| 経路 | 内容 | 効き方 |
|---|---|---|
| 単価の変動 | 主力サービスの報酬単価が増減 | 売上が直接増減する |
| 加算要件の変更 | 取得していた加算の要件厳格化 | 算定漏れ=減収・対応コスト増 |
| 利用動向の変化 | 利用者負担増による利用控え | 稼働率・利用者数の低下 |
特に人件費比率が60〜80%と高い介護事業では、売上が数%動くだけで利益が大きく振れます。改定後しばらくは入金が読みにくい局面が生まれやすく、ここで運転資金が不足すると経営が一気に苦しくなります。
介護報酬は、そもそもサービス提供から入金まで約2ヶ月のタイムラグがあります(詳しくは介護報酬の入金タイミングで解説しています)。改定による単価変動とこのタイムラグが重なると、資金繰りはさらに不安定になります。
今からできる4つの備え
改定の中身は確定していなくても、備えは今から始められます。
備え1:自事業所の「報酬構成」を把握する
まず、自事業所の売上がどの報酬・どの加算で構成されているかを分解します。主力単価が改定対象になったとき、収入がいくら振れるかを試算できる状態にしておくことが第一歩です。
備え2:資金繰り表で3ヶ月先を見える化する
改定局面で効くのは、先を読む力です。国保連からの入金予定と支出予定を月次で並べ、最低3ヶ月先まで予測する資金繰り表を整えましょう。資金繰りが厳しくなる原因と対策はこちらの記事でも詳しく解説しています。
備え3:予備資金を厚めに確保する
改定直後は読みにくさが増すため、月間支出の2〜3ヶ月分を目安に現金を確保しておくと安心です。
備え4:入金サイクルを短縮する手段を用意する
改定で一時的に資金が細る局面に備え、入金を前倒しできる手段を準備しておくと、急な資金不足に強くなります。その代表が介護報酬ファクタリングです。
介護報酬ファクタリングは、国保連から支払われる介護報酬債権を譲渡し、入金日より前に資金を受け取る仕組みです。手数料は0.25%〜0.8%程度と低く、借入ではないため信用情報に影響しません。改定後の不安定な時期に「2ヶ月の空白」を埋める備えとして有効です。
まとめ:議論の段階から動くことが、改定に強い経営をつくる
次期介護報酬改定(2027年度)に向けた議論は、すでに始まっています。
- 利用者負担の見直し、単価・加算の組み替え、経営安定化が主な論点(いずれも議論段階)
- 改定は「単価」「加算」「利用動向」の3経路で資金繰りに効く
- 確定を待たず、報酬構成の把握・資金繰り表・予備資金・入金サイクル短縮の4点を今から備える
改定の波を乗り切る鍵は、収入が読みにくい局面でも手元資金を切らさない仕組みを持っておくことです。
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※本記事の制度に関する記述は、社会保障審議会・介護保険部会の公開資料(2026年6月時点)に基づきます。論点は議論の段階であり、改定内容を確定的に示すものではありません。最新情報は厚生労働省の介護保険部会ページでご確認ください。